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杏林製薬株式会社は、悪性胸膜中皮腫を対象とする遺伝子治療用製品「Ad-SGE-REIC」の開発を行っています。本製剤は、アデノウイルスをベクターとして使用し、岡山大学で発見された新規がん抑制遺伝子REIC/Dkk-3(Reduced Expression in Immortalized Cells/ Dickkopf-3)を治療遺伝子として搭載。がん細胞選択的アポトーシスと抗がん免疫の活性化を同時に誘導し、がんの原発巣への直接作用とがん転移巣への間接作用が期待されます(下図)。岡山大学(公文裕巳特命教授)が実施している臨床研究では、前立腺がん治療での著効例も出ています。因みに、当社が進めている悪性胸膜中皮腫を対象とする開発は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)における産学共同実用化開発事業(NexTEP*)に採択(平成26年6月23日付)され、国の支援を受けるプロジェクトとなりました。杏林製薬は、現在、本製剤に関する技術やノウハウを有する岡山大学、およびその事業化を推進する創薬ベンチャー 桃太郎源株式会社と連携して、悪性胸膜中皮腫の患者さんを対象とした臨床第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施しています。
悪性胸膜中皮腫は、胸腔の内側を覆う膜に悪性腫瘍細胞が形成される疾患で、アスベストの曝露を原因として発症するとされています。現行の治療によっても予後不良の疾患であり、今後、患者数の増加が予想され、死亡者のピークとされる2030~2035年に向けて、より有用な新しい薬剤の開発が強く望まれています。杏林製薬は、このアンメットメディカルニーズの高い悪性胸膜中皮腫の患者さんに、一日も早く新しい治療薬を提供したいと考えています。
遺伝子治療を含む再生医療等製品の開発については、その特性を踏まえたうえで迅速かつ効果的に実用化を図るための「条件・期限付き承認制度」が創設されるなど、薬事法から薬機法への改正に伴い、法的環境面が大きく改善されました。日本オリジナルの画期的治療法を早期に実現すべく、この制度の利用も考慮しています。
世界的には、遺伝子治療用製品がようやく承認され始め、すでに多くの臨床試験が進められています。着実に時代は動いています。ただ、新しいアプローチであるがゆえに、実現に向けては多くの課題があることも否定できません。現在、杏林製薬では多くの担当者が本製剤の開発に関わっていますが、本製剤を患者さんに治療薬としてお届けすることはメンバー共通の夢です。多くの専門家のご意見も伺い、全メンバーが一丸となって難問を解決し、本製剤の開発に取り組んで参ります。
*産学共同実用化開発事業(NexTEP):独立行政法人科学技術振興機構(JST)が、大学等の研究成果に基づくシーズを用いて企業等が行う開発リスクを伴う規模の大きい開発を支援し、実用化を目指す制度